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カンファレンス (国内) がん検診に関するW E B検索動向とがん検診受診率,年齢調整罹患率,年齢調整死亡率の関連について

平 和也 (京大), 細川 陸也 (京大), 藤田 澄男, 塩見 美抄 (京大)

第13回日本ヘルスコミュニケーション学会学術集会 (第13回日本ヘルスコミュニケーション学会)

2021.9.29

【目的】 がんは日本人の死因第1位の疾患であり,その予防のため全国の自治体で対策型のがん検診が実施されているが,国の目標値50%に到達していない自治体が多数存在する.本研究では,都道府県ごとの対策型検診を実施している5がんに関するWE B上の検索動向とがん検診受診率,罹患率,死亡率の関係を明らかにすることを目的とする.国民ががんに関する検索をする動向との関連を明らかにすることで,受診率向上に向けた施策への示唆が得られる. 【方法】 検索動向は,ヤフー株式会社が提供するヤフー検索において,「胃がん」,「肺がん」,「大腸がん」,「乳がん」,「子宮がん」の検索数を都道府県ごとに抽出し,各単語の全検索数に対する抽出する都道府県の検索割合の比を対数化した特徴度スコア(以下,検索傾向スコア)に変換した.がん検診受診率は,国民生活センター基礎調査,死亡率は,人口動態統計,罹患率は全国がん登録の数値を用い,全ての統計で共通してデータが取得できる2016年の数値を用いた.まず,都道府県ごとの検索傾向スコア,検診受診率,死亡率,罹患率のSpearmanの相関分析を実施した.その後,検診受診率,死亡率,罹患率を従属変数,検索傾向スコア,高齢化率,男女比率,人口密度を独立変数とした重回帰分析を実施し,モデルの比較を行った.共著者の藤田は,データ提供元のヤフー株式会社の社員であるが,資金提供は受けていない. 【結果】 乳がん以外の4がんにおいて,年齢調整死亡率と年齢調整罹患率の相関は0.47-0.71程度と中程度以上の有意な相関があった。また検索傾向スコアとがん検診受診率の間の相関は,肺がんでr=-0.37(p=0.01),子宮がんでr=-0.31(p=0.04)で有意であった。重回帰分析では、肺がん(β=-0.342, p=0.004),乳がん(β=-0.412, p=0.007)と子宮がん(β=-0.402, p=0.006)で検索傾向スコアが有意な関連があった.さらに,胃がんでは,年齢調整罹患率(β=0.342, p=0.008),肺がんでは,年齢調整死亡率(β=0.419, p=0.003)を従属変数としたモデルにおいて,検索傾向スコアが有意な関連があった. 【結論】 検索傾向スコアとがん検診受診率は負の関連であり、年齢調整死亡率や年齢調整罹患率とは正の関連であることから、検索行動をとっている、すなわち、関心があるだけでは検診の受診にはつながらず、がんの早期発見につながっていない。

Paper : がん検診に関するW E B検索動向とがん検診受診率,年齢調整罹患率,年齢調整死亡率の関連について 新しいタブまたはウィンドウで開く (外部サイト)